- 「たたき台」ってどういう意味?
- 良い「たたき台」とはどのようなもの?
- 良い「たたき台」の作り方・コツってある?
ビジネスシーンでよく聞く「たたき台」。
実際にどう作ったらいいのか、良いたたき台とはどのようなものか、よく理解できていない人も意外と多いのではないでしょうか。
そこで本記事では「たたき台」の作り方・使い方をわかりやすく解説。良いたたき台の特徴や、たたき台を作るときのコツ・注意点などをまとめてみました。
参考書籍『仕事がデキる人のたたき台のキホン』の中にある記述や作例もまじえつつ、良い「たたき台」を作るためのエッセンスを凝縮しています。
本記事を読めば、「たたき台」づくりに対する疑問と重圧が消え、仕事の成果に直結する「たたき台」を作れるようになるでしょう。
「たたき台を作って欲しいと言われたけど、どう作れば良いかわからない」とお悩みの方はご一読ください。
参考書籍情報
『仕事がデキる人のたたき台のキホン』田中 志(著)
ボストンコンサルティンググループ(BCG)出身の著者により、優秀な「たたき台」の作り方がわかりやすく解説されています。
たたき台の意義や目的、たたき台を作るためのコツなどなど、「良い仕事」の土台となる「良いたたき台」づくりの要点が凝縮された1冊です。
「たたき台」はあらゆる仕事のスタート地点
ビジネスシーンでよく使われる「たたき台」とは、ある問題や課題を解決するための初期のアイデアや計画のことを指します。
「たたき台」は新しい企画やプロジェクトを立ち上げるときの基礎となるため、さまざまな企業で活用されています。
実際の使用例としては「〇〇くん、〜についてたたき台作っといて」といった感じです。
これは「〜について議論するために、必要となりそうな情報やあなたの意見・アイデアを簡潔にまとめておいて」という内容を意味します。
ちなみに、「〜」に入る内容は多種多様です。
- 企業キャンペーン
- 新規プロジェクト
- 商談で使うプレゼン資料
- 業務改善案 など
「たたき台」は、あらゆる仕事のスタート地点として機能します。
良い「たたき台」ってどんなもの?事例つきで解説
では、良い「たたき台」とは具体的にどのようなものを指すのでしょうか?
残念ながら、たたき台に絶対的な正解はありません。なぜなら、使うシーンによって最適な「たたき台」が異なるからです。
……という一言で終わらせるのは申し訳ないので、参考書籍に掲載されていた事例を紹介させてください。
事例:売上が落ちている地方ホテルの再生
その事例というのは、年々売上が落ちている地方ホテルの再生について。
入社5年目の若手社員が、「ホテル再生案のたたき台を作って欲しい」と上司から依頼されたというシチェーションです。
参考書籍には、このケースにおける「良いたたき台」と「悪いたたき台」の例がわかりやすく掲載されていました。
さて、ここでちょっとしたクイズです。
以下の2つの「たたき台」のうち、どちらが良い「たたき台」か考えてみてください。
▽たたき台① 作成期間:数時間
▽たたき台② 作成期間:1週間
実は、このケースでの良い「たたき台」は①なんです。少し意外じゃありませんか?
資料の見栄えや完成度は②のほうが良いため、パッと見は②のほうが良さげに見えますよね。
イマイチな「たたき台」の特徴
なぜ、②より①が優秀な「たたき台」なのでしょうか。
これは「たたき台」を作るそもそもの目的に立ち返るとわかりやすいです。
「たたき台」の目的は、議論の土台になることでしたよね。
「それっぽいデザイン、なんとなく良さげなアイデア」で仕上げられた②は、ひとつのアイデアとして完成されており、ツッコミどころが少なめ…。
これを「たたき台」にしても、議論が生まれにくいのです。
つまり、「議論の土台となる」という「たたき台」の役割を十分に果たせないわけです。
参考書籍では、②のようなたたき台を作った後によくある光景も紹介されていました。
②のたたき台を上司に見せた後、ほとんど議論することなくすんなりGOサインが出て役員会の議題に挙がることに。
良さげに見えた再生案ですが、役員勢からは袋叩きにあってしまいます。
上司はGOサインを出したくせに、会議では手のひらを返して役員たちの意見に賛同。ハシゴを外されるという悲しいストーリーが描かれています。
②は、「議論の土台として機能させる」ことではなく、「デザインや体裁を整える」ことに注力されています。
要するに、たたき台づくりで押さえるべきツボを間違えているのです。
②では、たたき台の時点での完成度が高かったゆえに、上司との議論が生まれませんでした。(=役員会に上げる前にアイデアを強化できなかった。)
そして、十分にたたけていないアイデアで役員会にのぞんだ結果、厳しい指摘を受けています。
1週間かけて細部までていねいに作り込んだことが仇となる、皮肉な結果なのです……。
優れた「たたき台」の特徴
一方、①は手書きのペライチ資料で、見栄えは決して良くありません。
しかしながら、以下の点で優れています。
- 一目で内容を理解できる
(←情報が多すぎない、シンプルに構造化されている) - 議論すべきポイントがわかりやすい
(←空欄が上手く使ってある、具体的すぎない)
①は「ツッコミの余地が多い=たたきやすい」ため、議論の土台になるというたたき台の役割をしっかりと果たします。
そんなわけで、今回のシチュエーションでは①のほうが優れたたたき台なのです。
参考書籍で描かれていた、①の「たたき台」を作ったあとのストーリーも紹介しておきます。
若手社員は①のたたき台をもとに上司と議論することで、有用なアドバイスやアイデアをもらいます。
初回の打ち合わせでは、「①のたたき台を改良し、また後日議論を深めよう」という結論に至りました。
①のたたき台を作るのに要したのはわずか数時間。作成を依頼されたその日に作って提出したので、役員会までに何度もたたくことができます。
自身のアイデアだけでなく、経験豊富な上司の知恵がふんだんに入った、強いアイデアに仕上がっていく予感…。
というストーリーが描かれています。
「たたき台」と「完成資料」の違いに注意
上記で紹介した①と②を端的に表現するなら、以下のようになります。
- ①は良い「たたき台」
- ②は何となく見栄えが良い「完成資料」
元々はどちらも「たたき台」として作られたものですが、②は「完成資料」という別種の成果物になってしまっているのです。
たたき台の適性 | 資料としての完成度 | |
---|---|---|
たたき台① | ||
たたき台② |
もし①(たたき台)を役員会や他社へのプレゼンに持っていったら、「なんだこの資料は!」と引かれることでしょう。
しかしながら、上司と一緒に議論するには、非常に有効な「たたき台」となります。
資料としては未完成すぎますが、たたき台としては優秀なのです。
逆に、②は資料としての体裁は整っています。
アイデアの良し悪しはさておき、ちゃんとした会議や他社へのプレゼンにも持っていける代物です。
ですが、「たたき台」として使うには完成度が高すぎて議論が起こりづらい…。
「議論の土台になって、アイデアを引き出す・強化する」というたたき台の役目を果たせません。
このように、「たたき台」と「完成資料」は別物です。
質を上げようとするあまり「完成資料」に近いものを「たたき台」として提出してしまう。
これは「たたき台」づくりにおいて陥りがちな落とし穴です。
たたき台は議論するための土台、あくまで「たたかれるためにあるもの」というそもそもの役割をを忘れないようにしたいですね。
良い「たたき台」の作り方|5つのポイントを押さえよう
ここからは良い「たたき台」を作るうえで重要となる5つのポイントを紹介していきます。
ポイント①たたくためのものだから気楽に
たたき台は、あくまでたたくためのものですから、完成度は低くて構いません。
逆に完成度が高すぎると、「たたき台」としての機能性を失ってしまいます。
まずは肩の力を抜きましょう。
たたき台づくりでは、「クオリティの高いものを作ろう」と意気込む完璧主義が発動しがち…。
真面目な人ほど、次のような落とし穴にハマってしまいます。
(悪い意味で)完成度の高いたたき台を作成して提出
→議論が起きずに次のフェーズへ
→後から欠陥が見つかって大きな手戻りが発生…
参考書籍にも以下のような記述があります。
たたき台の段階では、いいアイデアである必要はありません。
出典:『仕事がデキる人のたたき台のキホン』
(中略)
何度も繰り返しますが、たたき台は叩かれてこそ、なんです。
すばらしいアイデアが示されて、多くの人を感動させてもしょうがないんです。
叩かれて叩かれて、それを通じて何かを生み出す土台。それがたたき台の存在価値です。
たたき台は、たたかれるために存在します。資料としての完成度を上げるのは逆効果です。
完璧主義を捨て去り、気楽に作りましょう。
ポイント②スピード>>>質
たたき台づくりにおいては、質よりもスピードが大事です。
すばやく着手し、不完全でいいから完成させることを優先しましょう。
理由は、ひとりで考えるよりも、みんなでたたいてアイデアを強化していくほうが効率的だからです。
1週間で仕上げて1回たたくより、1日で仕上げて7回たたく方が、最終的なアイデアの質は高くなります。
たたき台をスピーディーに作るためのコツとしては、以下のような点が挙げられます。
- デザインや体裁にこだわらない
- フォーマットやツールを有効活用
- 過去の事例を真似する など
※各項目の詳細は後述
とりあえず、たたき台づくりにおいては「スピード>>>質」ということを覚えておきましょう。
質は何度もたたきながら、徐々に上げていけばOKです。
ポイント③デザイン・体裁にこだわらない
たたき台づくりでデザイン・体裁にこだわるのはナンセンス。
ほとんどの場合「たたき台」において、デザイン性は求められません。むしろ、あっても邪魔になります。
「たたき台」は資料として提出することが多いため、パワーポイントでまとめようとしがちです。
パワポって、触っているとデザインを整えたくなります。キレイに仕上げたくなります。(元来そのためにあるソフトですし。)
しかし、デザインにこだっていると、それだけ中身が薄くなってしまいます。つまり、本当に議論すべき点を見落としてしまうのです。
以上の理由から、たたき台は手書きやワードでサクッと作るのがオススメです。
デザインは気にせず、「議論の土台になるためにはどのような情報を盛り込むべきか?逆にどのような情報をボカすべきか?」この部分の検討に時間を使うのが得策といえるでしょう。
実際に、参考書籍の著者が所属していたコンサルファームでも、現場レベルの会議では手書きやワードの資料をたたき台にして議論することが多かったそうです。
「たたき台」において大事なのは、デザインではなく中身。体裁にこだわる必要はありません。
ポイント④”ありもの”を使ってショートカット
たたき台を作るときは、”ありもの”を使ってショートカットするのがおすすめです。
”ありもの”というのは、フォーマットやツール、フレームワークのこと。
世の中の仕事のほとんどは、すでに誰かが似たようなことを経験しています。
もしくは、効率よくタスクを進めるための道具が発明されています。
これらを積極的に使うのも、良い「たたき台」をすばやく作るには欠かせないポイントです。
ここでいう”ありもの”の代表例は以下のようなものです。
- フォーマット:自社、他社が過去にリリースした完成品 など
- フレームワーク:5W1H、雲雨傘 など
- 生成AI:ChatGPT など
これらの”ありもの”の活用例も2つほど紹介しておきます。
例①プレスリリースのたたき台作成
1つ目の例は、プレスリリースのたたき台を作るとき。
まずは自社あるいは他社が過去に出したプレスリリースを見てみましょう。
これから作るリリースのテーマに合いそうなものをフォーマットとして拝借すれば、たたき台づくりがスピーディーになります。
その結果、たたく回数が増えて最終的なリリースの質も高くなるでしょう。
こういったケースでは、Chat GPTなどの生成AIを活用するのも有効です。
生成AIに「たたき台のたたき台」を作ってもらうと、初手の作業を減らせます。
参考書籍では以下のようなプロンプト例が紹介されていました。
「あなたはプロの広報マンです。とあるリサーチ結果をプレスリリース形式で発表しようと考えているのですが、どのような項目をそのリリースに盛り込むべきか考えてください」
出典:『仕事がデキる人のたたき台のキホン』
「あなたはプロのマーケティングリサーチャーです。30代共稼ぎ夫婦の新しいライフスタイルのリサーチを実施したのですが、どのような分析軸でそのライフスタイルを表現すれば有効な分析ができるか、アイデアを10個考えてください」
こういったプロンプトを生成AIに投げると、「たたき台」づくりに使えるアイデアの種を苦労せずにGETできます。
そこから必要なものだけを厳選したり肉付けしたりすれば、「たたき台」の完成はもうすぐそこです。
例②自社サイトのリニューアル
2つ目の例は、自社サイトのリニューアル。
ここでもゼロからデザインを考えるのは非効率です。すでに世に出ているサイトを活用しましょう。
参考になりそうな他社サイトのデザインを集めてどれがイメージに近いかを議論すれば、完成までの手間を大きく削減できます。
このように、”ありもの”をうまく使えば「たたき台」づくりは快適になります。
使えそうな”ありもの”を使って、たたき台づくりを効率化してみましょう。
ポイント⑤意図的に”隙(スキ)”をつくる
最後のポイントは「意図的に”隙(スキ)”をつくる」こと。
これまで紹介した4つのポイントと比べると、やや上級者向けのテクニックとなります。
ここでいう「隙をつくる」とは、「あえて突っ込まれる余地を残す」こと。
たたき台にほど良い隙があることで、議論が活発になります。
おすすめなのは、たたき台の中に空欄を配置する方法です。
本記事の前半で紹介した「ホテル再生案」でも、このテクニックが使われています。
人は空欄があると埋めたくなるものです。相手に考えてもらいたい部分を空欄にしておくことで、自然にアイデアを引き出すことができます。
空欄を入れることで生意気だと思われるのが心配なら、わからない部分を「検討中です」「まだ決まっていません」といった文言にするのも良いでしょう。
空欄と同じように議論の足掛かりとして機能してくれます。
たたき台の作成例:プレスリリース
参考書籍に掲載されている、隙(スキ)をうまく用いた「たたき台」の例は以下です。
プレスリリースの概要をわかりやすく構造化しつつ、細かい部分の情報量が調整されています。
マストで議論したい部分には空欄や質問が用いられており、相手からアイデアを引き出す体制が整っています。
「たたき台」の強みが活きる使いどころ
つづいては「たたき台」の強みが活きる使いどころを紹介します。
「自分でたたくためのもの」、「他の人と一緒にたたくためのもの」の2パターンを意識するのがおすすめです。
自分のアタマを整理する
たたき台は自分の考えを整理するときに非常に有効です。
新しいタスクを始める足がかりとして自分用のたたき台を作り、それを自身でたたいてみましょう。
ゼロから何かを作るときは、足がかりになる「たたき台」の有無で効率が大きく変わります。
自分用のたたき台は誰かに見せるものでもありませんし、まずは紙とえんぴつからラフにスタートするのがおすすめです。
現状でわかっている情報や、アタマの中にある断片的なアイデアを言語化してみてください。
自分のためのたたき台を作る時は、生成AIを活用するのも良いでしょう。
上司・同僚に気さくに相談する感覚で生成AIと議論するだけで、意外とアイデアがまとまっていきます。
他の人のアタマを借りる
もうひとつの使いどころは、他の人のアタマを借りるときです。
自分ひとりで出せるアイデアには限界があります。
たたき台を自分でたたくのも意義のある作業ですが、誰かと一緒にたたくこともまた重要です。
この点については、参考書籍にも以下のような記述があります。
人は「一人でできること」や「時間」には限りがあります。
出典:『仕事がデキる人のたたき台のキホン』
時間をかけて頑張ってアイデアをひねり出してたたき台を作るのもいいですが、それを却下され続けたら、なかなか前に進めないでしょう。
ですから、思いつきレベルのアイデアでもたたき台を作って、それを周りに叩き上げてもらうほうが少しずつでも進んでいきます。
自分の限界を知り、周りに力を貸してもらうのはビジネスパーソンにとって大事なことです。
自分と対話しながら思考を深めるのは楽しいものですが、そこに終始していると視野が広がりません。
最低限の「たたき台」ができ次第なるべく早い段階で他の人の知恵を入れ、アイデアを効率的に強化していきましょう。
良い仕事は、良い「たたき台」から
今回はあらゆる仕事のスタート地点となる「たたき台」の作り方について紹介しました。
「たたき台」をうまく活用できると、優れたアイデアや望んだ成果を効率よく生み出せるようになります。
つまり、仕事の生産性を大きく向上させられるのです。
本記事で紹介したたたき台づくりのポイントは以下の5つ。
上記のポイントを意識しつつ、「良い仕事」の土台となる「良いたたき台」づくりに取り組んでみてください。
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